一見すると,授業態度が悪く,学習意欲も低いように見えるAさん。高校生にもなるとこのように自分の困り感を素直に出すことができない子どもも多くいると思います。このような子どもの困り感はどのように見抜けばいいのでしょうか。
今回は,Aさんの困り感から確認しましょう。Aさんには「板書が苦手」,と「姿勢が悪い」という2つの困り感がありました。しかし,それらにはAさん自身は気づいていましたが,周りにはばれないようにしていました。Aさん自身ものちにわかったことですが,Aさんには「発達性協調運動障害(DCD)」という特性がありました。
発達性協調運動障害(DCD)とは,協調的運動がぎこちない、あるいは全身運動(粗大運動)や微細運動(手先の操作)がとても不器用な障害です。いわゆる不器用や運動音痴などと呼ばれる人の中にこれにあたる人もいると思います。
一般的に話を聞きながら書くのは難しいため,「説明しながら板書をするのはよくない」というのはよく言われますが,Aさんにとっては黒板を見ながらノートに書くこと自体が苦手なため,板書しながら説明をする授業にはついていくことができなかったと振り返ることができます。また,発達性協調運動障害の人の中には筋肉の緊張が弱く,正しい姿勢を保持するのが難しい人も少なくありません。このため,Aさんは無意識的に座る姿勢を保とうとマンガのような姿勢になっていたのではないかと考えています。
Aさんのようなケースでは,本人も自分の特性について詳しく理解できずに,表面的に認識できている部分でさえ,苦手な部分として隠そうとするため,周りはなかなか困り感に気づけず,寄り添うことは難しい。
しかし,「態度が悪い」や「意欲がない」と一見して決めつけることはよくないということはわかりますね。
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